第38卦
睽(けい)-対立・疎遠
睽 (Kuí)
火天大有(火の上に沢)
上に火、下に沢(湖)がある形です。火は上へ燃え上がり、沢は下へ流れるという性質の違いから、対立や誤解、疎遠を象徴しています。しかし、この二つの三画は、同じ家に住む次女と末娘を表しており、意志は衝突しても共存せざるを得ません。つまり、争いの中でも何らかの関係性は残り、小さな実務的な事柄で共通点を見出せることを示しています。
キーワード
彖伝(判断)
この判断は、広範な対立や葛藤の時期において、大きな目標を追うのは現実的でないことを示しています。緊張が強すぎて大きな事業は成功しにくい。しかし、小さな問題に焦点を当て、合意できる部分を見つけることで、幸運を得ることができます。大きな動きよりも、実際的で控えめな一歩が求められる時期です。
象伝(イメージ)
火と水は性質が異なるものの、同じ枠内に存在します。これは君子にとって重要な教訓です。異なる意見や目的を持つ人々の中にあっても、ただ同調して自分を見失うのではなく、独自の個性や信念を保つことが大切です。真の調和は無理な均一化からではなく、多様性から生まれます。周囲と関わりながらも流されないことが求められます。
解釈と指針
第38卦を得た時、あなたは対立や誤解、疎遠の状況にあります。あなたの道は他者と分かれています。直接対決は溝を深めるだけでしょう。賢明な対応は違いを受け入れ、大きな問題の解決を無理に求めないことです。代わりに、小さな共通点や合意点を探しましょう。自分の信念を守りつつ、関係を慎重に進めることが重要です。大きな計画ではなく、忍耐強く関係を調整する時期です。対立する力も共存可能なのです。
六爻の解説
初九
最下位の陽爻
「悔いなし。馬を失っても追わず、自然に戻る。悪人を見たら誤りに注意せよ。」
対立の時は誤解が起こりやすい。何かを失ったり人が去っても、慌てて追いかけるべきではありません。無理に事を進めると悪化します。冷静に待てば、元に戻るものもあります。悪影響に巻き込まれないよう、自分の誠実さを守りましょう。
九二
二爻目の陽爻
「狭い路で師に会う。咎なし。」
対立の解決は、予期せぬ偶然の出会いから生まれます。計画された交渉ではなく、自然な接触が真の和解をもたらします。こうした思いがけない機会に心を開きましょう。
六三
三爻目の陰爻
「車が引き戻され、牛が止まる…始まりは良くないが終わりは良し。」
障害や屈辱に満ちた状況に直面し、物事が進まない苦しい始まりです。しかし、忍耐すれば最終的には良い結果が訪れることを示しています。
九四
四爻目の陽爻
「対立で孤立するが、志を同じくする者に出会う…危険あれど咎なし。」
全体の対立の中で孤立感を覚えますが、同じ考えを持つ一人の味方を見つけます。この信頼できる仲間との絆が、困難を乗り越える鍵となります。
六五
五爻目の陰爻
「悔いなし。親族が皮を噛む。このまま進めば咎なし。」
対立の原因は身近な人にあることを悟ります。距離を置くのではなく、表面的な壁を乗り越え、誠実に向き合うことが解決への道です。真心をもって接すれば誤解は解けます。
上九
最上位の陽爻
「孤立し、仲間を汚れた豚や悪霊の乗った車のように見る…最初は弓を引くが、やがて弓を置く。彼は盗賊ではなく、時が来れば求愛する。」
対立が極度の猜疑心を生み、相手を完全な敵と見なします。最初は攻撃的になるものの、やがて誤解に気づき、敵意を手放します。そうすることで和解の道が開き、やがて良い結果(雨と幸運)が訪れます。
恋愛・人間関係
この卦は、関係における対立や意見の不一致、感情的な距離を示します。パートナーと方向性が異なり、コミュニケーションがぎくしゃくし誤解が多い時期です。大きな決断や問題解決を急がず、「小さな事柄」に焦点を当てましょう。共通して楽しめる小さなことを見つけ、自分の個性を保ちつつも頑固にならないことが大切です。忍耐と距離を置くことで、自然な和解の瞬間(九二)が訪れます。
仕事・ビジネス
職場での対立や意見の衝突を示します。上司や同僚との不和、会社の方針への根本的な不一致があるかもしれません。大規模なプロジェクトは内紛や合意の欠如で停滞しやすいです。個々の責任を全うし、「個性を保つ」ことが重要です。無意味な争いに巻き込まれず、協力できる「小さな事柄」に注力しましょう。一人の味方(九四)を見つけることが、困難な環境を乗り切る鍵となります。
健康・ウェルネス
体内の不調和を示すことがあります。身体の各システムが対立し、混乱した症状が現れるかもしれません。自己免疫疾患や代謝の乱れなどが考えられます。極端な治療は避け、穏やかで継続的なケアによりバランスを取り戻すことが望ましいです。食事、適度な運動、ストレス軽減など「小さな事柄」に注目し、体内の対立を調和させましょう。
金銭・財運
金銭面での対立を示し、配偶者や家族、ビジネスパートナーとの意見の不一致が予想されます。財務目標や戦略に根本的な違いがあり、共同事業や大きな投資は控えるべき時期です。損失のリスクが高いため、自分の資産を慎重に管理し、「小さな事柄」での合意にとどめましょう。対立が収まるまで財務的な絡みは避けるのが賢明です。
自己成長
異なる意見が飛び交う世界で、自分らしさを保ちながら歩む難しさを教えています。「交わりの中にあっても個性を失わない」ことが成長の鍵です。敵意や孤立に陥らず、他者の違いを受け入れ(上九)、自分の信念を守ることが試されます。内なる強さ、多様性への寛容さ、そしていつ固く立ち、いつ謙虚に小さな繋がりを求めるかの知恵を育む時期です。
時期と助言
慎重さと戦略的な忍耐が求められる時期です。大きな計画は不利な環境にあります。争いを勝ち取るのではなく、管理することが目標です。大きな問題での直接対決は避け、成功可能な小さな課題にエネルギーを注ぎましょう。誠実さと信念を保ちつつ、非公式で予期せぬ和解の機会に心を開くことが大切です。緊張が和らぐのを待ってから大きな動きを起こしましょう。