卦27
頤(い)-養い
頤 (Yí)
山の上に雷がある形
この卦の象は開いた口を表し、上下の実線が唇、中間の陰線が口の開き具合を示しています。これはあらゆる形の「養い」を象徴します。食べ物や飲み物だけでなく、発する言葉、受け取る情報、そして精神的な糧も含まれます。自分が何を取り入れ、何を外に出すかに注意を払い、心身ともに健やかであることを促す強いメッセージです。
キーワード
彖伝(判断)
適切な養いとは何かを意識し、責任を持つことが成功の鍵です。食べ物や思考、付き合う人々など、自分が「摂取」するものをよく観察し、同時に言葉や行動で他者にどんな「養い」を与えているかも考えるべきです。真の健康はこうした意識的な選択の積み重ねから生まれます。
象伝(イメージ)
雷(行動や言葉)は静かな山(内省)から生まれます。正しい言動は静かな思索から生まれるという教えです。賢者は言葉を軽々しく発せず、他者への養いとしての言葉の力を理解しています。また、無分別な摂取を避け、節度とバランスを保つことで自己の本質を養います。
解釈と指針
卦27を得た時は、人生のあらゆる面で「食べるもの」を見直す時です。あなたは何を取り入れていますか?噂話やネガティブな情報に心を奪われていませんか?それとも知恵や前向きな考えを摂取していますか?身体にはジャンクフードではなく、栄養豊かな食事を与えていますか?誰と時間を過ごし、その人たちはあなたの心を養っていますか、それとも疲弊させていますか?また、あなたの言葉や行動は周囲に励ましや真実をもたらしていますか?この卦は、こうした流れを自覚的にコントロールし、健康で誠実な人生を築くことを促しています。
六爻の解説
初九
最下位の陽爻
「魔法の亀を放ち、口の端が垂れて私を見つめる。不運。」
自らの内なる知恵や自立心(魔法の亀)を手放し、他者の持つものを羨む状態です。この依存と不足感に囚われることは不運を招きます。
六二
二爻目の陰爻
「頂上に養いを求め、道を外れる…続ければ不運。」
不適切な方法や依存的に養いを求めています。これはバランスを欠き、持続不可能です。この状態を続けると問題が生じます。
六三
三爻目の陰爻
「養いを拒み、忍耐すれば不運。十年間行動せず、何も吉とならず。」
完全な不均衡の状態です。真に必要な養いを拒み、不健康な欲望に走っています。このままでは破滅的です。長期の静養と内省が必要です。
六四
四爻目の陰爻
「頂上に養いを求める。吉。虎のような鋭い眼差しで周囲を見守る。」
他者を養う責任を担い、上からの資源や指導を求めつつ、下の者を助けることに集中しています。この利他的な姿勢が吉をもたらします。
六五
五爻目の陰爻
「道を外れるが、忍耐すれば吉。大きな水を渡るべからず。」
指導的立場にあるが、最終的な知恵の源ではないことを自覚しています。高位の賢者に依存し、謙虚さを保つことで吉を得ますが、大きな挑戦には独立した権威が不足しています。
上九
最上位の陽爻
「養いの源。危険を察知すれば吉。大きな水を渡ることが進む。」
多くの者に養いを与える立場にあります。賢者や指導者としての責任を担い、危険を認識しつつ行動することで、大きな困難も乗り越えられます。
恋愛・人間関係
この卦は、あなたの関係性の「食べ物」を深く見つめるよう促します。あなたとパートナーは互いにどんな養いを与え合っていますか?励ましや支え、誠実さに満ちたコミュニケーションでしょうか?それとも批判や非難、噂話に満ちていますか?関係の健康はこの流れにかかっています。また依存の問題も問われます。健全な関係とは、互いに自立した二人が支え合うものであり、一方が他方から感情的や経済的に「養われる」関係ではありません。もし羨望や不足感(初九の「口の端が垂れる」ような状態)を感じるなら、自分の価値と幸福を内側から育む時です。健全な感情のやり取りを意識的に選ぶことで、双方にとって真に支え合うパートナーシップが築けます。
仕事・ビジネス
職場における「養い」とは、企業文化や仕事の中身を見直すことを意味します。社員に成長や機会、尊重を与える環境でしょうか?それとも恐怖や過労、毒性のある文化でしょうか?また、顧客に対して真の価値や質の高いサービスを提供していますか?それとも巧みなマーケティングや空約束だけでしょうか?倫理的には、すべての関係者を養うビジネスを目指すべきです。個人としては、給与という物理的な養いだけでなく、目的意識や知的挑戦、自己成長という精神的な養いも仕事から得られているかを問うべきです。職場の「ジャンクフード」的な政治やネガティブな空気、無駄な時間に注意し、実質的で充実した仕事に取り組みましょう。
健康・ウェルネス
この卦の最も直接的な応用は身体の食事に関するものです。自分の体に何を取り入れているかを意識的に見直す時です。食べ物の選択は健康的で意図的ですか?それとも便利さや感情に流されて無意識に摂取していますか?節度とバランスを保つことが求められます。しかし、食事だけでなく「精神の食事」も重要です。どんな情報やニュース、娯楽を摂取していますか?不安や恐怖を煽るものですか?それとも励ましや学びをもたらすものですか?また「社会的な食事」も考慮しましょう。付き合う人や会話は養いになるか、消耗させるかの大きな要素です。真の健康とは、あらゆる面で健全で生命力を高めるものを意識的に選ぶ生活を築くことです。
財務・お金のこと
財務面では、「養い」は健全で持続可能な経済生活を築くことを示します。バランスの取れた「財務の食事」を心がけましょう。短期的な儲け話やリスクの高い投機、衝動的な浪費という「ジャンクフード」は避け、堅実な貯蓄や資産への賢明な投資、計画的な予算管理という「自然食品」を選びましょう。また、お金があなたに安心や自由、価値ある追求の力をもたらしているかを考えましょう。ストレスや不安を生んでいませんか?さらに、あなたの資源が他者を養うためにどう使われているかも重要です。寛大さや社会的貢献は健全な財務の循環の一部です。稼ぎ、貯め、使い、与えるという流れを意識的にバランスよく保つことが求められます。
自己成長
この卦の本質は自己修養の技術にあります。あなたの個人的・精神的成長は、何を自分に「与える」かに直結しています。象伝が示す究極の教えは「言葉を慎み、飲食に節度を持つ」こと。つまり、自分の成長に対して徹底的に責任を持つことです。あなたは魂の庭師であり、どの種(学ぶ思想や師)を植え、どの雑草(否定的な自己対話や制限的な信念、不健康な習慣)を抜くかを意識的に選ばなければなりません。言葉はこの過程で重要な道具であり、一つ一つの言葉が現実を形作ります。意図と真実をもって話すことで、自分自身と周囲の世界を養うのです。この意識的な摂取と創造の道こそが精神修養の核心であり、強く、安定した徳ある人格の形成へと導きます。
時機と助言
今こそ意識的な摂取者かつ創造者となる時です。これは未来の計画ではなく、現在の瞬間の気づきです。日々の小さな選択に注意を払い、それらが積み重なって人生の基盤を作ることを理解しましょう。パターンを評価し、判断せずに観察した後、より健全な養いへと意図的にシフトを始めてください。内省、節度、自己責任の時期です。こうして築かれた健康と誠実さの土台が、長く続く幸運をもたらします。