第27卦、第5爻

爻辞

解釈

この爻は重要かつ逆説的な意味を持ちます。第5爻は君主の位置ですが、陽の中の陰爻であり、自身の限界を自覚したリーダーを示しています。君主の「経」とは、すべての者に直接養いを与えることですが、この爻は「経を拂う」、つまりその道を外れることを勧めています。これは反抗ではなく深い知恵の表れです。君主は自分一人で全てを養う力がないことを認め、無理をせず従来の期待から離れ、別の方策を取ります。吉は「居貞」、つまりその自覚を堅持することにあります。直接の行動ではなく、上位の知恵（六爻）に依り、実務は有能な部下（二爻）に任せるのです。「大川を渡るな」という警告は、独力で大きな事業に乗り出すなという意味です。静かに委任し、他の力を借りることが成功の鍵となります。

行動への指針

あなたは影響力や責任のある立場にいますが、すべてを自分で賄う力や資源が不足していると感じるかもしれません。今は無理に全てを自分でやろうとせず、従来のやり方から一歩引くのが賢明です。自分の限界を認めることは弱さではなく強さの証です。あなたの役割は全ての解決策の源になることではなく、賢明な調整役となることです。信頼できる人材に仕事を任せ、彼らの能力を信じましょう。同時に、指導者や確立された原則、精神的な知恵など、より高い源からの助言やインスピレーションを求めてください。大きくリスクのあるプロジェクトを独力で始めるのは避け、戦略的な視点から着実に状況を管理することが成功の鍵です。

恋愛・人間関係において

あなたは「完璧なパートナー」として、すべての感情的・経済的・実務的な支えを一手に担おうとプレッシャーを感じているかもしれません。この爻は、その無理な理想から離れるよう促しています。関係の中で唯一の養い手になることはできず、またそうすべきではありません。そうしようとすると疲弊し、バランスを崩します。愛と誠実さを堅持しつつ、受け入れる姿勢を持ちましょう。パートナーの強みを頼り、お互いに支え合うことが大切です。今は大きな一方的な愛の行動（「大川を渡る」こと）ではなく、持続可能で相互に支え合う関係を築く時期です。幸運は、与え受けるのバランスを保つことにあります。

仕事・ビジネスにおいて

リーダーやマネージャーとして、すべての専門知識を持ち、全てを自分でこなすことはできません。「経を拂う」とは、全ての答えを持つ英雄的な上司の役割を捨てることを意味します。真の価値はチームの才能をまとめる能力にあります。有能なメンバー（二爻）に重要な責任を委ね、彼らの力量を信頼しましょう。あなたは全体のビジョンと戦略を堅持し、上層部や企業の基本理念（六爻）から指針を得る役割です。個人的な関与に依存する大規模なプロジェクト（「大川を渡る」こと）は避けてください。成功は、直接的な指示ではなく、他者を活かすリーダーシップにかかっています。

金銭面での助言

この爻は、大きな金銭問題を「自分だけで何とかしよう」とすることに強く警告しています。投資や財務管理を全て自分で行うべきだと感じるかもしれませんが、ここは別の戦略が求められます。「経を拂う」とは、自分の金融知識の限界を認めることです。吉は、確かな原則を堅持しつつ、専門家の助けを借りることにあります。信頼できるファイナンシャルアドバイザーや会計士、資産運用の専門家に相談しましょう。大きな投機的投資や複雑な金融取引を独力で行う（「大川を渡る」）のは避けるべきです。安全は慎重な管理と専門家の助言にあり、無謀な独断行動にはありません。