第7卦 初爻
師(し)
初六:師出以律
爻辞
初六:師出以律,否臧凶。
軍は規律をもって出陣すべきである。規律を欠けば凶となる。
解説には「軍は規律をもって出陣すべし」とあり、規律を失うことは凶を招くと説かれている。
解釈
第7卦の初爻は、大きな事業の始まりを示し、それは軍隊の動員に例えられます。成功の基盤は厳格な秩序と規律(律)にあります。これは単なる戦闘規則だけでなく、使命の明確さや指揮系統の整備を指します。この爻は厳しい警告を含んでいます。正当な理由があっても、手段が混乱し無秩序であれば、最初から失敗は避けられません。「否臧」は「良くない」や「不適切」を意味し、その結果は「凶」、すなわち不運です。曖昧さは許されず、弱い出発点は後から修正が難しく、全体を腐敗させてしまいます。この爻は、正しい行動は正しい構造から始まることを強調しています。
行動への指針
新たな重要なプロジェクトや挑戦に取り組む前に、まず最も重要なのは規則や構造、指針を確立することです。焦って行動を起こすのではなく、綿密な計画と組織化の時期としてください。目標を明確にし、関係者の役割と責任をはっきりさせましょう。行動計画を立て、必要な資源を整えることが成功の鍵です。曖昧なまま進めると失敗を招きます。最初の一歩を踏み出す前に、状況の「法と秩序」をしっかり整えましょう。
恋愛・人間関係において
恋愛や人間関係の文脈では、この爻は「関係のルール作り」の重要性を示します。新しい関係なら、相互尊重や明確なコミュニケーション、共有する価値観を最初から築くことが大切です。既存の関係で問題や新たな段階(同棲や結婚など)を迎える場合は、共通のルールや原則を意識的に定めるべき時です。対立や金銭、家族の扱いについての合意が曖昧だったり不公平だと、「良くない」状態となり、争いや悲しみ(凶)を招きます。健全な関係を育むための強固な基盤を築く時期です。
仕事・ビジネスにおいて
仕事やビジネスの場面では、新しい事業の開始時に構造と計画が不可欠であることを示しています。新プロジェクトの立ち上げ、チーム編成、新規事業の開始いずれも、最初の段階が肝心です。プロジェクトの目的や範囲、予算、役割分担、コミュニケーションのルールを明確にしましょう。リーダー不在や使命の不明確なチームは内紛や非効率を招き、失敗に終わります。新しい職場では、規則や手順、社風をしっかり学ぶことが成功への第一歩です。規律あるスタートが未来の成功を保証します。
金銭面において
金銭面では、衝動的や無計画な行動への強い警告です。大きな投資や貯蓄計画、借入を始める前に、まず厳格なルール、すなわち予算を設定しましょう。これが「規律」です。収支を把握し、目標を定め、明確な戦略を立てることが必要です。調査や計画なしに投資したり、予算なしに支出することは、規律なき軍隊の出陣と同じで、結果は易経が断言するように凶、すなわち損失を招きます。まず金銭のルールを作り、それを厳守して行動してください。