六十一番卦 四爻
中孚(内なる誠実)
九四:月幾望
爻辞
九四:月幾望,馬匹亡,无咎。
月はほぼ満ちている。馬が迷い出るが、咎めなし。
解説によれば、「馬匹亡」とは、下の者との縁を断ち、上の者に向かうことを意味する。
解釈
この爻は、重要でやや不安定な転換点を示しています。あなたは成功の間近にあり、まるで「ほぼ満ちた月」のように、影響力や理解が頂点に近づいています。しかし、最終段階に進むためには、必然的な断絶が必要です。「馬匹亡」は、共に歩んできた仲間や習慣、居心地の良い繋がりを象徴していますが、それはより低い段階や異なる道に属しています。さらなる高みを目指すためには、その繋がりを断ち切らなければなりません。これは裏切りではなく、エネルギーと忠誠心の再調整です。この爻は上卦の巽(風)にあり、穏やかで広がる影響を示し、五爻の主卦に向かっています。この「喪失」は六十一番卦のテーマである「内なる誠実」を表し、「類を絶ちて上に従う」ことを促しています。したがって、失うものはあっても「咎めなし」、正しい行動であり成長に不可欠なのです。
行動への指針
大きな成果が目前に迫っていますが、それを掴むためには何か、あるいは誰かを手放す覚悟が必要です。あなたの人生における「馬匹」が何を指すのか見極めましょう。それは成長を妨げる友情、群れの思考に縛られた職場の仲間、あるいは乗り越えた古い信念体系かもしれません。誤った忠誠心や安心感からこれらの繋がりに固執しないでください。あなたの内なる誠実さが、より高い存在や目的へと導いています。悪意ではなく、道が分かれることを理解し、縁を断ち切りましょう。視線を上に向け、最終目標や真の指導者、知恵ある者たちに注目してください。この一見つらい別れは、あなたの成長にとって正しく必要な一歩です。
恋愛・人間関係において
この爻は、関係性において選択を迫られる時を示します。関係を満月のように成熟させるためには、足を引っ張る外部の影響から距離を置く必要があるかもしれません。パートナーを支えない友人の集団、価値観と衝突する家族の期待、あるいはまだ手放せていない過去の恋愛などが該当します。この「馬匹亡」は、核心となる関係を優先し、パートナーと完全に調和することを意味します。失うように感じたり、困難な別れかもしれませんが、関係を新たな親密さと約束の段階へと昇華させるために必要なことです。独身の場合は、気軽で居心地の良い繋がりや特定の社交場を手放し、より意味のある「高次の」愛に向けて自分を開くことを示しています。
仕事・ビジネスにおいて
これは職場で「群れから抜け出す」典型的な状況です。昇進や大きなプロジェクトの完了、重要な評価が目前に迫っています(「月はほぼ満ちている」)。しかし、直属の同僚や旧チームへの忠誠心(「馬匹」)が足かせとなっています。前進するためには、同僚から上司や組織の戦略的目標へと忠誠を移す必要があります。友人と距離を置く役割を担ったり、彼らにとって不人気な決断を下すこともあるでしょう。孤立感や喪失感を覚えるかもしれませんが、易経はこれが正しい選択であると示しています(「咎めなし」)。仕事の高い目的に対する誠実さを、社会的な快適さより優先させる時です。
金銭面において
重要な財務目標が間近に迫っていますが、ポートフォリオの一部や特定の金銭習慣が足を引っ張っています。「馬匹」は居心地は良いが成果の上がらない投資や、あなたの高い志と合わなくなった金融パートナーやアドバイザーを表すかもしれません。この爻は、快適だが制限的な財務要素から離れ、より可能性のある機会へ資源を再配分することを勧めています。リスクや未知の領域に感じても、この「馬」を手放すことは誤りではなく、財産を「満月」の段階に導くための戦略的な一手です。潔く断ち切ることに咎めはありません。