第6卦 第四爻
讼(争い)
九四:不克訟
爻辞
九四:不克訟,復即命,渝安貞,吉。
九が四爻にあるとき:争いに勝てない。立ち返り、定めに従い、心を改めて正しさを保てば、吉となる。
解説曰く:「立ち返り定めに従い、心を改めて正しさを保つ」とは、道を誤らないことを意味する。
解釈
この爻は「讼(争い)」の卦の中で重要かつ幸運な転換点を示します。強い陽爻であるこの位置の人物は争いに巻き込まれていましたが、勝てないことを悟ります。この爻は君主のすぐ下に位置する臣下の役割を示し、上卦の天に属して力強いものの、最終的な権威を持たず勝利を得ることはできません。 この爻の知恵は、その悟りに対する対応にあります。無理に争い続けて災いを招くのではなく、意識的に退くことを選びます。「立ち返り定めに従う」とは、状況の根本的な現実や大きな秩序を受け入れること。自我の勝利への執着を手放す行為です。続いて「心を改めて正しさを保つ(渝安貞)」という内面的な変化が必要です。単に物理的に引くのではなく、心の態度を戦うものから受け入れるものへと変えること。正しい道を歩み、争わずに安定を見出すことで、さらなる損失や災難を避けられます。この賢明な撤退は敗北ではなく、別の形の勝利であり、「吉」となるのです。
行動への指針
現在、あなたは争いの中にあり、勝算を冷静に見極める必要があります。易の示すところは明快で、無理に押し切っても勝てないということです。争いを続ければ疲弊し、損失や屈辱を招くでしょう。頑固さやプライドは控え、戦略的に退くことが最善です。現実を受け入れ、正しさや勝利への執着を手放してください。争いの道から引き返し、心の態度を攻撃的から受容的へと変えることが肝要です。自分の信念に沿った、より持続可能な進み方を見つけましょう。これは敗北ではなく、賢明な自己防衛であり、最終的に平穏と幸運をもたらします。
恋愛・人間関係において
この爻は、力関係のもつれや繰り返される口論、根本的な不一致を示しています。あなたは相手を変えようとしたり、議論に勝とうとしたりしてきましたが、もうそれは無理だと気づく時です。これ以上押し進めると関係が壊れ、自分自身も傷つきます。争いをやめ、結果をコントロールしようとする執着を手放すことが求められます。「立ち返り定めに従う」とは、相手をそのまま受け入れ、関係の現状を認めること。次に「心を改める」ことが重要で、現実に心の平安を見出すことです。共存の新しい穏やかな方法を探すか、あるいは争いが根深い場合は関係を終わらせることでしか平和は得られないかもしれません。いずれにせよ、争いを手放すことが幸運を呼びます。
仕事・ビジネスにおいて
職場で上司やライバル、あるいは方針に対して争いが起きているかもしれません。自分が正しいと感じていても、この爻は勝つ力や権限、資源が不足していることを示しています。争いを続けると評価を落とし、悪影響が及ぶ恐れがあります。賢明なのは距離を置くこと。議論をやめ、問題のプロジェクトから手を引くか、反対をやめて現状を受け入れましょう(「立ち返り定めに従う」)。自分が力を発揮できる分野に注力し、既存の枠組みの中で平和的に働く道を探すことです。この戦略的撤退は弱さではなく成熟の証であり、将来の勝負に備えるための政治的資本を守ることになります。
金銭面において
この爻は、金銭に関する争い、失敗した投資、あるいは勝ち目のない法的争いを示唆しています。損失を取り戻そうと無駄な出費を続けたり、勝てない裁判に多額の費用をかけているかもしれません。メッセージは「やめなさい」ということです。現実を冷静に見極め、争いを続ければさらに損失が膨らむだけだと認めましょう。損切りをし、訴訟を和解し、失敗した資産を手放すか、債権者との争いをやめることが必要です。戦う姿勢から守りの姿勢へと心を切り替え(「心を改めて正しさを保つ」)、資金の流出を止めることで、財政を安定させ、より堅実で平穏な基盤の上に再建を始められます。