卦番号56、上九の爻
旅(たび)
上九:鳥焚其巢
爻辞
上九:鳥焚其巣,旅人先笑後號啕。喪牛于易,凶。
上九:鳥が巣を焼かれる。旅人は最初に笑い、その後に泣き叫ぶ。牛を失うのは軽率による。凶。
解説によれば:最高位の旅人であることは、焼かれることの意味である。軽率に牛を失うとは、結局誰も耳を傾けないことを示す。
解釈
この上九の爻は、旅人の道が誤った時の悲劇的な結末を表しています。高位に達した者(上九)であっても、旅人としての謙虚さ、慎重さ、柔軟性という基本を忘れてしまっています。鳥の巣が焼かれるという象徴は、安住の地や安全な場所が完全に破壊されることを意味し、その破壊は自ら招いたものです。旅人の最初の笑いは、驚くべき傲慢さと無自覚さを示しています。他者の不幸を嘲笑うか、あるいは自分が規則を超越していると誤信しているのかもしれません。この慢心はすぐに逆転し、激しい嘆きと絶望へと変わります。「牛を失う」とは、優しさや信頼できる基盤を軽率に失うことの象徴です。最終的な判断は「凶」であり、解説は「このような振る舞いのために、誰も助けの声に耳を貸さない」と締めくくられています。孤立無援の破滅を意味します。
行動への指針
この爻は、成功や長い苦労の末に得た地位において、傲慢や慢心、冷酷さに陥ることへの厳しい警告です。ここまで導いてくれた謙虚さと慎重さを忘れてはいけません。現在の立場は見た目以上に危ういものです。他者を嘲笑ったり、責任を怠ったりすることは、自らの安全を焼き尽くす行為です。細部にまで注意を払い、誠実さを保ちましょう。「牛」はあなたの優しさや堅実さ、重要な資源を象徴しています。軽率に失わないようにしてください。もし傲慢な行動に気づいたら、すぐに改め、謙虚さを取り戻し、他者を敬いましょう。橋を焼き尽くせば、困難に直面したときに頼る人がいなくなります。
恋愛・人間関係において
この爻は、一方の傲慢や怠慢によって関係が破綻することを示しています。あなたか相手が関係や相手を当然のものと考え、慢心してしまった可能性があります。冷笑や見下し、優越感が関係に深い傷を残しました。この行動は「巣を焼く」ように、共有していた家庭や感情的な安定を壊します。傲慢な自信から始まった関係は、深い後悔と悲しみで終わります。「牛を失う」とは、優しく忍耐強い愛情の基盤を軽率に失うことを意味します。この段階での和解はほぼ不可能で、信頼が完全に失われたため、傷ついた側は「もはや耳を貸さない」状態です。
仕事・ビジネスにおいて
この爻は、職場での急激な失墜を警告しています。高い地位や成功を得たことで、同僚や規則、仕事の細部を軽視し、傲慢になっているかもしれません。部下を嘲笑ったり、無謀なリスクを取ったりして、自分は無敵だと錯覚している可能性があります。この行動は、プロジェクトの崩壊、解雇、評判の失墜(「巣が焼かれる」)という悲劇を招きます。最初の自信と成功(「笑い」)は、絶望的な後悔(「号啕」)に変わります。「牛を失う」とは、重要な資産やチームの支援、職業的な誠実さを軽率に失うことを示しています。再起の願いは無視されるでしょう。
金銭面において
これは、財務面での慢心に対する厳しい警告です。成功や大きな利益の後、無敵感に浸り、リスクを笑い飛ばし、慎重な助言を無視してしまうかもしれません。その結果、大きな無謀な投資や資産の管理の怠慢(「牛を失う」)を招きます。財政的な安全(「巣」)は焼き尽くされ、かつての成功の喜びは深い損失の苦しみに変わります。この状況は傲慢さと注意不足による自業自得であり、他者からの助けや同情を得るのは困難です。周囲はこの破局をあなた自身の愚かさの結果と見なすでしょう。