第51卦、第2爻
震(しん)-雷の動き
六二
爻辞
六二,震来厉,亿丧贝,跻于九陵,勿逐,七日得。
雷の衝撃が危険をもたらす。莫大な財産を失う。九つの丘を登るが、追いかけてはならない。七日後に取り戻せる。
解説曰く:「雷の衝撃が危険をもたらす」とは、強い陽爻の上に陰爻が乗る不安定な状態を示す。
解釈
この爻は突然の激しい危機を表しています。衝撃は小さな揺れではなく、甚大な損失をもたらす危険な出来事です。「莫大な財産の喪失」は、富や安全、評判、人間関係、大切な事業など、価値あるものすべての比喩です。人は本能的に慌てて失ったものを追いかけたくなりますが、この爻の知恵は逆説的な助言にあります。混乱に飛び込むのではなく、「九つの丘を登る」つまり高く安全な場所へ退くことを勧めています。これは視野を広げ、危険から距離を置き、心の平静を保つことを意味します。最も重要なのは「追わないこと」。損失を追いかけると、さらに混乱と危険に巻き込まれます。最後に「七日後に取り戻せる」とあるのは、損失は一時的であることを示し、自然の周期を表しています。冷静に安全な場所で待てば、状況は好転し、失ったものや同等の価値を回復できるのです。陰爻が陽爻の上に乗る不安定な状態が、危機の根底にあります。
行動への指針
突然の危機や大きな挫折に直面したとき、まず自分の安全と安定を確保することが最優先です。慌てて損失を取り戻そうとせず、衝動的な行動を抑えましょう。むしろ一歩引いて高い視点から状況を見つめ直すことが大切です。今は失ったものを手放し、混乱の中心から離れて冷静に待つ時期です。自然の流れを信じ、焦らずに時を待てば、状況は落ち着き、失ったものや新たな道が見えてきます。今の力は戦略的な退避と忍耐にあります。
恋愛・人間関係において
突然の衝撃的な出来事が関係を揺るがせています。大きな口論、裏切り、急な別れなど、絆の基盤が崩れたように感じるでしょう。すぐに謝罪や追及をしたくなるかもしれませんが、この爻はそれを強く戒めています。追いかけることで事態は悪化し、相手との距離が広がるだけです。賢明なのは「九つの丘を登る」つまり一旦退き、自分の心身を整え、感情的な距離を取ることです。お互いにスペースを与え、連絡を追い求めないこと。冷静に自分を立て直すことで、最終的な和解や自分自身の平穏という最も価値ある回復が可能になります。「七日」は冷却期間を示し、その後の再会や和解の可能性を暗示しています。
仕事・ビジネスにおいて
突然の大きな挫折を経験しています。重要なプロジェクトの失敗、主要顧客の喪失、事業の崩壊、あるいは予期せぬ解雇などが考えられます。損失は甚大で、焦りが募るでしょう。しかしここでの助言は明確です。無理に状況を取り戻そうとせず、失った顧客を追いかけたり、リスクの高い新規事業に飛び込んだりしないこと。むしろ「九つの丘を登る」つまり戦略的に一時停止し、冷静に状況を分析しましょう。資源を守り、安定を図り、長期的な戦略を見直すことが重要です。損失を手放し、適切な時期を待てば、新たなチャンスが訪れます。市場の回復やより良い仕事、深い洞察がより強固な計画をもたらすでしょう。焦らず冷静な対応が回復の鍵です。
金銭面において
株価の大幅下落、投資の失敗、予期せぬ大きな出費など、重大な金銭的ショックを受けています。打ちひしがれ、すぐに損失を取り戻そうと焦る気持ちが強いでしょう。しかしこの爻は、リスクの高い資産に追加入金したり、借金をして再投資したりすることを厳しく戒めています。それは破滅への道です。正しい行動は「九つの丘を登る」こと。残った資金を確保し、支出を抑え、安定した財政基盤を築きましょう。冷静にポートフォリオや全体の財務状況を見直し、失ったお金は潔く手放すことが肝要です。慎重かつ忍耐強く待つことで、やがて「七日」の周期のように状況は好転し、安定した回復と成長の機会が訪れます。今は短期的な利益よりも資本の保全と安定を最優先に。