第50卦、四爻
鼎(かなえ)
九四:鼎折足
爻辞
九四:鼎折足,覆公餗,其形渥,凶。
鼎の足が折れる。公の食事がひっくり返る。形が汚れる。凶。
注釈曰く:公の食事が覆るとは、信頼を失うことを意味する。
解釈
易経の中でも特に凶兆とされる爻の一つです。鼎(かなえ)は神聖な務めや養い、国家の権威を象徴しますが、その足が折れるとは基盤や支えが崩壊することを示します。足は土台や支援者、重要な役割を担う人物を表し、その支えが失われることで鼎は倒れ、貴重な「公の食事」すなわち重要な事業や共同体への恩恵が台無しになります。これは単なる損失ではなく、公の面前での恥辱を意味します。「形が汚れる」とは、名誉や信用を失い、責任者の無能さや判断ミスが露呈することを示しています。注釈が指摘するように、信頼の根本的な崩壊が問題の核心です。任された者が能力不足か、信頼できない者を選んだためにこのような大失敗を招いています。失敗は根本的であり、非常に深刻です。
行動への指針
この爻は厳しい警告です。あなたは責任ある立場にありますが、その基盤が致命的に脆弱です。直ちに立ち止まり、状況を徹底的に見直す必要があります。頼っている人々は信頼に足るか、チームの能力は十分か、計画は堅固な基盤の上に成り立っているかを検証してください。自分の力量を過信しているか、あるいは他者への信頼を誤っている可能性が高いです。このまま進めば公然の失敗と恥辱を招きます。重要な責任を委ねる際は、その人物の誠実さと能力を確実に見極めてください。もし既に失敗が起きているなら、言い訳は無用です。責任を受け入れ、判断の誤りから学び、信頼回復のための長く困難な道を歩み始めるしかありません。
恋愛・人間関係において
恋愛や人間関係の文脈では、この爻は深刻な基盤の危機を示します。鼎は関係そのものを表し、その「折れた足」はもはや支えきれない根本的な弱点を意味します。不貞や信頼の裏切り、あるいは関係が偽りや根本的な不一致の上に築かれていたことが明らかになる場合があります。「公の食事が覆る」とは、愛情や希望、将来の計画が一気に崩れ去ることを象徴します。結果は混乱と痛みを伴い、しばしば周囲にも知られる形での破綻となります。「形が汚れる」は恥や心の傷を指します。この爻を受けたなら、関係の根幹を正直に見つめ直す時です。修復ではなく、問題の本質を直視しなければなりません。基盤の欠陥を認めなければ、重大な崩壊は避けられません。
仕事・ビジネスにおいて
この爻は、管理職やプロジェクトリーダーなど権限を持つ立場の人にとっての赤信号です。鼎はあなたのプロジェクトや部署、責任範囲を示し、「折れた足」はチームや計画の致命的な弱点を指します。無能な部下、欠陥のある技術、誤った戦略に依存している可能性があります。「公の食事」は上司や顧客が期待する成功の成果であり、それが覆るとは大失敗や重大な納期遅延、広範囲に及ぶイメージダウンを意味します。あなたの職業的信用(「形が汚れる」)は大きく傷つき、信頼は崩壊します。今すぐ立ち止まり、チームの見直し、計画の厳密な検証を行い、弱点を特定して破綻を防ぐべきです。構造的な安全性が確信できるまで、大きな決断は控えてください。
金銭・財務において
財務面では、この爻は基盤の欠陥による大損失の警告です。鼎はあなたの資金計画や重要な投資を表し、「折れた足」は見落とされた致命的な弱点を示します。悪質な金融アドバイスに頼る、根本的に不安定な企業への投資、セキュリティに問題のあるプラットフォームの利用、過剰なレバレッジなどが考えられます。「覆った食事」は資本の喪失、突然の投資崩壊を意味します。「形が汚れる」は信用情報の悪化、破産、あるいは自分や他人の資金を失ったことによる個人的な屈辱を表します。リスクを取るべき時ではありません。すぐにポートフォリオと財務戦略を見直し、「うますぎる話」や疑わしい助言・人物に基づく投資は手放すべきです。全損の危険が非常に高い状況です。