卦42、上六
益(増加)
上六
爻辞
上六,莫益之,或擊之,立心勿恆,凶。
上六:誰にも利益をもたらさず、時に攻撃を受ける。心を定め続けられないならば、凶となる。
解説によれば、「誰にも利益をもたらさず」は偏った見方を示し、「攻撃を受ける」は外部からの反発を意味する。
解釈
この上六は「益」の原理が頂点に達し、歪められる可能性を表しています。吉兆の成長と共有の時期は最高潮に達しましたが、それと同時に傲慢や欲深さ、成功の基盤を忘れる危険も伴います。この位置の人物は孤立し、全体のために与え続けるのではなく、利益を独り占めしたり自己中心的に振る舞ったりします。そのため「誰にも利益をもたらさず」、周囲の支持や好意を失います。この孤立が彼を標的にし、「攻撃」は偶然の不運ではなく、自己中心的な行動への外部からの反応です。失敗の根本は「立心勿恆」すなわち心の不安定さにあります。もはや相互の益を願う誠実な心ではなく、欲や恐れ、自己顕示に揺れ動く意志が支配しています。この不安定な心が凶を招き、没落へとつながるのです。
行動への指針
この爻は厳しい警告です。成功や影響力の頂点に達した今、傲慢や自己中心でそれを台無しにする危険があります。自己点検の時です。自分は他者への貢献をやめていないか?幸運を当然と思っていないか?権利意識で行動していないか?すぐに軌道修正し、謙虚さと寛大さの精神を取り戻しましょう。資源や知識、時間を分かち合い、個人的利益を超えた高い目的に心を定めてください。自己中心的な態度を続ければ反発を招き、大きな挫折を被るでしょう。今は拡大やさらなる獲得ではなく、徳によって地位を固め、与える時です。
恋愛・人間関係において
この爻は関係の危ういバランスを示します。一方(または双方)が関係の成長や幸福に貢献しなくなり、相手を当然視したり自己中心的に振る舞ったり、感情が不安定で信頼できなくなっています(「心を定め続けられない」)。この態度は不満と距離を生み、激しい衝突や裏切り、場合によっては関係の終焉を招きます。相互支援の基盤が崩れています。災いを避けるには、すぐに自己中心的な態度を改め、感情を再投入し、真摯な感謝を示し、安定した愛情表現を心がけることが必要です。「自分が何を得るか」から「共に何を築くか」へ意識を切り替えましょう。
仕事・ビジネスにおいて
この爻は、リーダーや上級社員、成功した起業家が道を誤ったことを警告します。成功の絶頂でチームや会社の使命から離れ、他者の指導や功績の共有、良好な職場環境への貢献を怠っています。情報を独占し、栄誉を独り占めし、自己中心的な判断を繰り返すことで批判や競争、降格の標的となっています。支援基盤は失われ、「攻撃」は同僚や上司、市場からの反発です。状況を立て直すには傲慢な態度を捨て、謙虚にチームと関わり、成功を分かち合い、不安定な野心を組織の利益に合わせることが必要です。
金銭面において
この爻は、財運の絶頂期に潜む危険を示します。大きな利益を得た後、欲深さや慢心に陥り、賢明な投資や寛大な分配をせず、資金を独り占めしたり衝動的で軽率な判断を繰り返しています(「心を定め続けられない」)。この態度は脆弱さを生み、突然の市場崩壊、失敗投資、法的問題、予期せぬ大きな出費などの「攻撃」を招き、利益を失う恐れがあります。益の幸運は態度によって使い果たされました。災いを避けるには、貪欲な獲得から賢明な蓄積と分配へ戦略を即座に切り替え、財産を守りつつ一部を分かち合うことが唯一の道です。