卦33、四爻
遁(とん)
九四:好遯
爻辞
九四:好遯、君子吉、小人否。
四爻の九:良き退き方。君子には吉、しかし小人には凶。
解説曰く:君子の良き退きは、小人の行き詰まりを意味する。
解釈
この爻は「退く」行動の重要な転換点を示しています。四爻の九は強い陽爻で、上卦の初めに位置する天(☰)の爻です。下の陰爻に絡まれず、支配的な五爻に近いため、明晰さと力強さを持ち、決断力を発揮できる自由があります。 「好遯(こうとん)」の「好」は「良い」だけでなく「好む」「喜ぶ」という意味も含みます。つまり、嫌々ではなく、正しく賢明な判断として自発的かつ巧みに退くことを示しています。君子は、悪化した状況や有害な環境から離れることを弱さと捉えず、むしろ卓越した知恵の表れと理解します。自我を切り離し、潔く断ち切ることで、品格とエネルギーを守り、吉運をもたらします。 一方、小人はこのような退きをできません。地位やプライド、勝ちたい欲望、物質的な執着に絡まれ、離れられずに不利な状況に留まってしまいます。解説は、君子が退くことで、小人は争いの場を失い、その影響力が遮断されることを強調しています。
行動への指針
この爻は、あなたのエネルギーを消耗させ、信念を損なう状況から潔く断ち切ることを勧めています。ためらいや感傷に流される時ではありません。感情を切り離し、冷静な判断で行動することが最大の武器です。ネガティブな状況に深入りすることは損失を招きます。退くことは自発的で優雅なものであり、慌てて逃げることとは異なります。退くことで自分を守るだけでなく、ネガティブな要素に必要な注目を与えず、勢いを削ぐことができます。たとえ周囲が「諦め」と見なしても、今こそ戦略的に身を引くべき時です。長期的な幸福のための賢明な選択です。
恋愛・人間関係において
恋愛や人間関係の文脈では、この爻は関係性が非生産的または有害になった状況を示します。ここで求められるのは「良き退き」です。根本的に健康的でない場合は関係を終わらせることも含まれます。より微妙には、繰り返される争いのパターンから決然と距離を置くことです。例えば、同じ無意味な口論に巻き込まれるなら、怒りではなく冷静な心で関わらないことが賢明です。君子の態度は感情の健康を守るために一歩引くこと。小人は正しさやドラマに固執し、苦しみを長引かせます。
仕事・ビジネスにおいて
この爻は、ネガティブな職場環境から距離を置く必要性を示しています。有害な同僚、行き詰まったプロジェクト、文化が崩壊した会社、あなたを妨害する上司などが該当します。「良き退き」は戦うべきでない戦いを避け、オフィスの政治に巻き込まれずに賢明に身を引くことです。異動願いや問題のある仕事の辞退、新しい職場探しなどが具体例です。君子はキャリアと心の健康を守るための戦略的な行動を取ります。小人は地位に固執し変化を恐れて苦しみ続けます。
金銭面において
金銭面では、この爻は損切りの強いサインです。明らかに失敗している投資や事業、資金計画に関わっている可能性があります。「良き退き」とは、感情的な未練を断ち切り、損失を確定して撤退することです(いわゆる「サンクコストの誤謬」を避ける)。君子は冷静な判断で資本を守り、より良い機会に備えます。小人や未熟な投資家は執着して損失を拡大させます。今こそ決断し、感情を切り離すべき時です。