33番卦 九三爻
遁(とん)
九三:係遯
爻辞
九三:係遯,有疾厲,畜臣妾吉。
九三の陽爻:絡み合うような退却。困難と危険が伴う。男の家臣と女の妾を養うことは吉とされる。
解説によれば:絡み合う退却の危険は、その苦しみから来る。 「男の家臣と女の妾を養うことは吉」とは、大きな事を成し遂げられないことを意味する。
解釈
この爻は困難で妥協を強いられる退却を示しています。不利な状況から退く必要があるものの、執着や義務、感情的な結びつきに縛られて身動きが取れません。これが「係遯(絡み合う退却)」であり、不安と危険を生み出します。敵対する力に近すぎて、きっぱりと離れることができないのです。「男の家臣と女の妾を養うことは吉」という助言は象徴的で、今は大きな決断や行動は難しいが、絡まった状況をうまく管理することに価値があるという意味です。まるで主人が家を管理するように、身近な責任や関係者を丁寧に扱うことで危機を抑えられます。ここでの吉は大成功ではなく、危機を安定させ、崩壊を防ぐことにあります。完璧な逃避は無理でも、巧みに絡まりを処理し、無事に切り抜けることが可能です。
行動への指針
今は完全で潔い退却は難しいと認めましょう。まずは自分を縛る人間関係や義務、感情を見極めることが大切です。これらの縛りに逆らって無理に離れようとすると、かえって危険が増します。むしろ、しっかりと管理し、注意深く対応することが求められます。大きな新しい挑戦や戦略的な動きは控え、被害の最小化に努めてください。絡み合う相手とは明確な境界線を引き、可能な限り役割を分担しましょう。勝利や完璧な脱出を目指すのではなく、絡まりに巻き込まれずにうまくやり過ごすことが目標です。小さく実践的な安定策に集中してください。
恋愛・人間関係において
この爻は、別れが必要だが複雑に絡み合った関係を示します。離れたい気持ちは強いものの、共有した過去や感情的依存、子どもや金銭的な責任などが絡み合い、深い苦悩を生みます。突然の劇的な別れは逆効果で、さらなる混乱や痛みを招くでしょう。賢明なのは、責任を持って別れのプロセスを進めることです。実務的な面に注力し、共同育児の計画を立て、資産を公平に分け、冷静かつ毅然としたコミュニケーションを心がけましょう。ここでの「吉」は、成熟した対応によって破壊的な争いを避けられることを意味します。ロマンチックな理想は脇に置き、現実的な管理に努めるべきです。
仕事・ビジネスにおいて
現在の仕事やプロジェクト、ビジネスが行き詰まり、離脱が必要ですが困難が伴います。契約やチームへの忠誠、パートナーへの金銭的義務などに縛られているため、軽率な撤退は法的問題や損害、評判の悪化を招く恐れがあります。最善の策は、計画的で段階的な撤退です。基本的な責務を果たし、部下や関係者を丁寧に管理することで(「家臣妾を養う」)、依存する人々の安定を保ち、自身の退路を確保します。新たな野心的な計画や事業は延期し、今は前進よりも現状の整理と責任ある対応に注力してください。
金銭面において
失敗しつつある投資や重い借金、資金を圧迫する契約に縛られている可能性があります。離脱すべきと分かっていても、契約上の義務や感情的な結びつきがあり、リスクと苦痛を伴う状況です。慌てて資産を処分したり、債務不履行に陥ると大きな損失(「疾厲」)を招きかねません。ここでの指針は、焦らず状況を管理すること。予算を綿密に管理し、安定した小規模な資産や収入源(「家臣妾を養う」)を大切にしましょう。債権者や関係者とは明確かつ毅然とした態度で接し、大きな投機的取引は避けてください。吉は奇跡的な利益ではなく、損害を抑え財務の安定を図ることにあります。