33番卦、初爻
遁(退却)
初六:遁の末尾
爻辞
初六:遯尾、厲、勿用有攸往。
初六:退却の末尾にあたり、危険が伴う。どこへも行くべきではない。
解説曰く:「退却の末尾の危険」とは、前進しなければ災いはないという意味である。
解釈
この爻は退却の最初で最下位に位置し、退却隊列の「末尾」にあたります。敵対する勢力に最も近く、非常に危険な場所です。ここでの「厲(危険)」は切迫しており、後衛として捕らえられたり、包囲されたり、孤立するリスクが高い状態を示しています。前進したり、新たな行動を起こしたり、ためらって動こうとすることは、かえって災いを招きます。問題の根源に近すぎて自由に動けないため、最優先すべきは撤退に専念することです。解説が示すように、前に進もうとしなければ災いは避けられます。絶対的な慎重さと、前進を断つことが安全な退却の鍵となります。
行動の指針
困難な状況の始まりで、退却を余儀なくされる脆弱な立場にあります。今は否定的な影響や失敗しつつある事態に近すぎて、積極的な変化を起こすことはできません。最優先は自己防衛です。新たな計画や行動は即座に停止し、問題を解決しようと無理に動くのは避けましょう。最も賢明なのは、静止して距離を置き、状況が自然に進むのを見守ることです。安全を確保するには、動かずに速やかに静かに退くことが肝要です。
恋愛・人間関係において
この爻は、関係が悪化しつつあるか、ネガティブな状況に陥っていることを示します。退く必要性を感じ始めたものの、まだ深く絡み合っている状態です。最後の話し合いや劇的な決着を求めたり、相手を変えようとするのは危険で、かえって混乱や感情的なもつれを深めます。正しい対応は、関わりを断ち、連絡を控え、静かな距離を保つことです。交渉の時期ではなく、感情の安定を守るための穏やかな退却が求められます。新しい関係の始まりでこの爻が出た場合は、傷つく前にすぐに止めるべきという重大な警告です。
仕事・ビジネスにおいて
職場で危うい立場に置かれています。失敗しつつあるプロジェクトや有害なチーム環境、縮小が予想される部署にいる可能性があります。「末尾」にいるため、最も危険にさらされているか、最後に安全に離脱できる立場です。新たなプロジェクトを始めたり、責任を増やして問題を解決しようとするのは逆効果で、スケープゴートにされる恐れがあります。指示は明確で、現状の業務をこなしつつ、新しいことには手を出さず、目立たずに静かに転職や異動の機会を探るべきです。失敗の渦中に巻き込まれないよう距離を置くことが目標です。
金銭・財務において
この爻は特定の投資や財務案件に対する強い警告です。現在のポジションは危険な状態にあり、下降局面の「末尾」に位置しているため、さらなる損失のリスクが高いです。反発を期待して追加投資をする誘惑がありますが、易経はこれを強く戒めています。これ以上の行動や投資は危険で、損失を拡大させる可能性が高いです。最善の策は資金投入を止め、可能なら損切りして現金や安定資産に切り替え、資本を守ることです。リスクを取る時期ではなく、市場の下落に抗おうとせず守りに徹するべき時です。