第28卦・上六爻
大過(たいか)
上六:過ぎて流れに溺れる。凶。
爻辞
上六:過涉滅頂。凶,无咎。
上六:流れを渡り過ぎて、頭まで水に浸かる。凶。咎なし。
解説曰く:流れを渡る際の凶は、咎められるべきものではない。
解釈
この上六爻は、第28卦に描かれた危機の最高潮を表しています。圧力は極限に達し、状況はもはや耐え難いものとなっています。イメージとしては、洪水の川に果敢に踏み入れ渡ろうとするが、水深が深すぎて完全に溺れてしまう様子です。結果は「凶」—試みは失敗し、圧倒されてしまいます。しかし同時に「咎なし」とされる点が重要です。この違いこそがこの爻の核心です。行動は愚かさや欲望からではなく、高潔で切実な意図から生まれました。状況を救い、他者を助け、あるいは信念を守ろうとしたものであり、失敗は外的な圧倒的状況によるものであって、人格の欠陥ではありません。これは英雄的な敗北であり、自己を超えた大義のための尊い犠牲です。行為の誠実さは結果の不運を超越しています。
行動への指針
あなたは圧倒的な困難に直面しており、通常の方法では良い結果を得ることが難しい状況にあります。この爻は、慎重な駆け引きの時期は終わったことを告げています。大胆で決断力のある、時には自己犠牲的な行動が求められています。自分の利益や安全を顧みず、純粋な意図と無私の心から行動しなければなりません。その努力が個人的な損失や「失敗」に終わる可能性があることも覚悟してください。しかし、もしあなたの動機が大義のため、他者を救うためであれば、咎められることはありません。あなたの誠実さと名誉は守られ、たとえ失敗しても尊敬されるでしょう。軽率に行動するのではなく、もし行動するならば、価値ある大義のための意識的な犠牲であるべきです。結果に執着せず、純粋な意図に集中することが鍵です。
恋愛・人間関係において
この爻は、究極の犠牲の瞬間を示しています。パートナーシップが乗り越えがたい試練に直面しているかもしれません。怒りや自己中心的な理由ではなく、相手の幸せや幸福のために、心を痛めながらも手放す決断を迫られることがあります。これが関係の「凶」、つまり終わりを意味します。しかし「咎なし」は、あなたの動機が純粋な愛から来ていることを示しています。あるいは、自分の欲求を完全に犠牲にしてでも、相手を支え困難を乗り越えようとする場合もあります。関係は「水没」してしまうかもしれませんが、あなたの無私の献身は責められることのない深い愛の証です。
仕事・ビジネスにおいて
この爻は、仕事やビジネスにおける危機的な局面を示しています。原則を貫くために立ち上がらなければならず、それが職を失うことや会社の倒産につながるかもしれません。内部告発や倫理的妥協の拒否、部下を守るためにチームの失敗を引き受けることなどが考えられます。結果は「凶」—地位や事業を失うことですが、「咎なし」は誠実に行動した証です。価値観を曲げずに「船と共に沈む」ことを選んだのです。困難な道ですが、長期的には名誉と評判を守ります。失敗に賭ける最後の賭けは避け、損失を尊厳をもって受け入れることが賢明です。
金銭面において
この爻は、絶望的な財政状況を救うための最後の無謀な賭けを戒めています。奇跡を期待して最後の資金を失敗投資に注ぎ込むのは避けましょう。「洪水」に飲み込まれるだけです。「凶」は避けられない金銭的損失を示し、「咎なし」は誠実に損失を受け入れることを意味します。破産を正直に受け止め、返せる借金は返し、他者を欺こうとしない態度です。また、家族の高額な医療費など緊急事態で自分の財政を犠牲にして誰かを助ける場合も示唆しています。損失は大きいですが、その行為は無私であり、責められるものではありません。