第24卦 上六爻
復(ふく)
上六:迷復
爻辞
上六:迷復,凶,有災眚。用行師,終有大敗,以其國君凶,至于十年不克征。
上六:復の道を誤り迷う。凶。災いが起こる。軍を動かせば、最終的に大敗を喫し、国の君主にまで禍が及ぶ。十年もの長きにわたり遠征は叶わない。
注釈曰く:誤った復の凶は、君主の道を犯したことに由来する。
解釈
この上六爻は「復」のテーマの不運な結末を示しています。卦全体が自然で良い転換点を意味するのに対し、この爻は正しい復帰の機会を逃した状態を表します。「復」が「迷う」(迷復)とは、自然の流れに逆らい、内面の静かな修正を認めず、誤った方向に固執したり、外部の強引な手段で復帰を試みる人を指します。 「軍を動かす」(用行師)という表現は、争い、訴訟、強引なビジネス手法、あるいは実際の戦争など、あらゆる強硬な行動を象徴します。これは第24卦の精神である静かで自然な回復とは真逆の行動です。その結果は単なる失敗ではなく「大敗」となり、問題は「国の君主」にまで及びます。これは自己の指導原理やエゴ、組織のリーダーシップに根ざした根本的な問題を示しています。頑固さと誤った視点が原因で、長期間にわたる停滞、すなわち「十年もの遠征不能」という深刻な結果を招きます。この爻は、時期を誤って無理をすることへの厳しい警告です。
行動への指針
これは明確な停止の警告です。特に力づくや対立、自己の意志を押し通す計画は中止すべきです。単純な軌道修正の好機を逃してしまいました。頑固やプライドで現状を続ければ、重大かつ長期的な敗北を招きます。 「君主」とは内なる判断やエゴを指し、問題は自己の誤った認識や現実の受け入れ拒否にあります。強硬な行動は事態を悪化させるだけです。今すべきは完全な停止と撤退、深い自己反省です。なぜ迷ったのかを正直に見つめ、誤りを認めること。必要なのは謙虚さと現実主義への「復帰」です。無理に勝とうとすれば、長く苦しい後悔と停滞が待っています。
恋愛・人間関係において
この爻は、真の和解の機会を逃した後に無理やり関係を修復しようとする悲劇的な試みを示します。関係が壊れていることを認めず、自分の理想に迷い込んでいる状態です。大げさで誤った行動、口論、最後通告、圧力(軍を動かすような行動)は逆効果となり、愛情ある復帰ではなく「大敗」、つまり最終的で痛みを伴う別れを招きます。問題の根底には「誤った君主」、すなわちエゴや誤解に基づく愛の理解不足があります。無理に押し進めれば、回復に何年もかかる深刻な心の傷を負い、将来の健全な関係を築く妨げとなるでしょう。手放すことが賢明です。単純な復帰の時期は過ぎ去りました。
仕事・ビジネスにおいて
この爻は、失敗したプロジェクトに固執したり、敗北が明らかな戦いを続けたり、攻撃的なキャンペーン(例:元雇用主への訴訟、敵対的買収)を仕掛けることへの警告です。状況を根本的に誤判断し、戦略的な転換の機会を逃しています。今さら倍賭けするのは破滅への道です。「軍を動かす」とは、失敗した事業にさらに資源を投入したり、強力な上司と対立したり、市場に受け入れられない商品を投入することを意味します。「大敗」は解雇、事業の崩壊、信用失墜などの形で現れます。原因は「君主」、つまり自分自身や上司のリーダーシップの欠如です。「十年」の停滞は、こうした誤りがキャリアに長期的な悪影響を及ぼすことを示唆しています。賢明なのは損切りし、失敗を認めて撤退し、戦略を見直すことです。
金銭・財務において
これは典型的な「損切りしないでさらに投資するな」という警告です。損失の大きい投資をプライドや希望から手放せずにいます。「軍を動かす」とは、損失を取り戻そうと追加投資したり、レバレッジをかけたり、リスクの高い取引をすることです。この戦略は「大敗」を招き、資金を失いかねません。「誤った君主」とは、感情や頑固さに惑わされた自身の財務判断を指します。この警告を受け入れ、今すぐ損切りし現実を受け入れることが重要です。そうしなければ、象徴的な「十年」に及ぶ長期的な経済的打撃を被る恐れがあります。損失を確定し、残りの資金を守りましょう。