卦11、五爻
泰(たい)
帝乙歸妹
爻辞
帝乙歸妹,以祉元吉。
帝乙が娘を嫁がせる。これにより祝福と最高の吉運がもたらされる。
注釈によれば、「祝福と最高の吉運」とは、この中心の位置から願いが叶うことを意味する。
解釈
この爻は易経全体の中でも特に吉兆とされる位置にあります。卦11の五爻、すなわち「君位」にあたり、卦自体が調和と繁栄の時期(泰)を示しています。ここで描かれるのは、商王朝の歴史上の君主である帝乙が、娘を下位の諸侯に嫁がせた場面です。これは謙虚さと優雅さ、そして戦略的な英知を示す行為です。強大な権力を振るうのではなく、親族関係を結ぶことで上下の隔たりを和らげるという、積極的な謙譲の精神が表れています。この陰爻が陽の強い位置にあることは、力を柔らかく制御し、受容と結びつきによって権威を示すという原則を体現しています。この行動が泰の時代の継続を保証し、単なる受動的な待機ではなく、謙虚に下位の者と関わることで吉運を確かなものにし、最高の願望を実現させるのです。その結果は単なる吉運ではなく、「元吉」と呼ばれる根本的かつ永続的な成功を意味します。
行動への指針
あなたは現在、影響力や強み、優位な立場にあります。最良の結果を得るためには、謙虚さと優雅さをもって行動することが鍵です。傲慢になったり形式にこだわったりせず、むしろ下位や不利な立場の人々と橋を架けるように接しましょう。資源や知識、地位を惜しみなく分かち合い、協力関係を築くことで、自身の立場を損なうことなく、むしろ強固にし、相互利益と広範な調和を生み出します。親しみやすさと人間的なつながりを大切にすることが、最高の成功をもたらし、計画を完璧に実現させる原動力となるでしょう。エゴを脇に置き、寛大さをもってリードしてください。
恋愛・人間関係において
この爻は恋愛や人間関係において非常に良い兆しを示します。婚約や結婚など祝福された結びつきを意味することが多いです。背景や地位、性格の違いを謙虚さと優雅さで乗り越え、パートナー同士が互いに歩み寄る関係性を表しています。もし一方が「強い」立場(感情的に安定している、経済的に余裕があるなど)にあるなら、その人が寛大さと理解を示し、安心できる愛の空間を作り出すことが大切です。これは力の不均衡ではなく、互いに尊重し合い、献身の精神で結ばれる美しい関係です。このような基盤の上に築かれた関係は、深い幸福と長続きする吉運を約束します。
仕事・ビジネスにおいて
仕事面では、あなたが権威や上位の立場にあることを示しています。最大の成功は命令を下すことではなく、指導や協力、チームの力を引き出すことから生まれます。功績を分かち合い、部下の意見に耳を傾け、協調的な環境を積極的に育てましょう。戦略的な連携を築き、あらゆる階層の同僚と謙虚に関わることで、強い忠誠心と尊敬を得られます。このリーダーシップスタイルが、プロジェクトの成功を確実にし、組織に「元吉」の輝きをもたらすでしょう。謙虚でつながりを大切にする姿勢が、あなたの影響力を飛躍的に高めます。
金銭面において
この爻は、あなたが経済的に安定または豊かな立場にあることを示唆しています。今最も賢明なのは、資源をため込むのではなく、戦略的に活用してパートナーシップやチャンスを生み出すことです。例えば、有望な小規模企業への投資、共同事業の立ち上げ、あるいは慈善活動や家族の起業支援などが考えられます。財力を「嫁がせる」つまり、経済的に劣る相手と有益な結びつきを作ることで、共に成長するダイナミズムが生まれます。この戦略的な寛大さと協力関係が、利益だけでなく安定的で幸運なリターンをもたらすでしょう。